「土壌水分」と苗の生育

( おもとの丘奮闘記 ⑮ )


最近、いささか専門的というかマニアックになっている傾向がありますが、ま、ご辛抱ください。

梅雨真っ盛りというのに、今回は「土壌水分」について考えてみたいと思います。


 「おもとの丘」は、かぼす(一部ゆず)を育て、収穫して販売し、収入を得る農場です。

 当たり前のはなしですが、植えた苗をできるだけ早く大きくして、できるだけ多くのかぼすを収穫し、

 できれば、高価格で販売して農場経営を発展、安定させたいと考えています。

 

 現在、毎年苗を植えて農場の規模を拡大しているところですが、この、幼木時代の管理はかなり重要で

 また、難しいのです。(何回か前に「かなり大変 幼木管理」で書きました。)


植物の生育に必要なものは?

 植物の生育に必要なものは「適度な土壌水分」「適度な肥料分」「日射量」「温度」などですが、かぼす

 の苗を植えて初期の頃、一番影響を受けるのは「土壌水分」ではないかと思います。


2番圃場の生育が悪い


     (芽の伸びが悪く、色も薄い)    6月20日現在   (新芽が全く出ていない、葉色も薄い)

                                  土もカラカラでした


 今年の春、2番、3-1番、3-2番と3枚の圃場で苗を植えました。合計面積は2.4ha(ヘクタール)です。

このうち、2番圃場の苗の生育が悪いのです。この原因は、一つは植え付け時期の遅れがあろうかと思い

 ます。

 3枚の圃場のうち、あとの2枚は3月末までに植え付け作業を終了していますが、この2番圃場は、造成工事

 の工程の都合で、4月末まで植え付け作業がかかりました。この1か月の差は大きいのです。

 

 3月から4月にかけて気温が徐々に上昇し、苗圃(なえほ)に仮植してあった苗が芽を出そうとしているとこ

 ろ、掘り上げて別のところに植えると、一旦芽の動きが止まります。出遅れてしまったのです。


 もう一つの原因は土壌水分です。

  植えるときには十分な水を与えて植えたのですが、その後、5月に晴天で高温の日が続いたり、6月に入

  ってからもまとまった雨が定期的に降らず、乾燥気味で推移しました。

  せっかく芽が動き出しても、十分な土壌水分がなければ、芽はすくすくとは伸びませ




潅水をしたらよいのでは?

 乾燥するなら、水をやればよいじゃないかと思うかもしれません。野菜などのハウス栽培では、潅水チューブを

 配置してたっぷり水をやり、みずみずしい野菜を収穫しています。

 しかし、果樹の露地栽培(ろじさいばい:ハウスではなく自然な環境での栽培)では、潅水(かんすい:人為的

 に水をまくこと)は普通は行いません。果樹は根が深く、大量の水を必要とするからです。



マルチをしたらよいのでは?

  黒のポリエチレンマルチ(黒ポリマルチ)は大変有効です。マルチは、野菜類では広く行われている技術で、

  果樹類の苗にも取り入れられています。おもとの丘でも、昨年春に植えた圃場で一部マルチを張り、生育は

  とても順調でした。

  2022年春 1年後の姿 生育良好

  2021年春 マルチ設置直後   (①番圃場       施肥のためマルチは剥ぎました。


この黒ポリマルチは、何が良いかというと「適度な土壌水分を保てる」のです。大雨が降っても、マルチの下は濡れすぎず根が水にどっぷり漬かることはありません。また、乾燥するときは土からの水分蒸発を抑え、根の周りが適度に湿った状態にしてくれます。おまけに、草が生えるのを防ぎます。


   (好ましい土の三相分布)

土は岩石が風化して小さい粒になり、それに水が付着して、粒と粒の間に空気が含まれる状態。

この固相(固体)と液相(液体)と気相(気体)の比率を三相分布(さんそうぶんぷ)といいます。


一般的な植物は固相40~50%、液相20~30%、気相

20~30%が良いといわれています。


つまり、土は適度に水分や空気を含む状態がよくて、

どっぷり水に漬かったり、からっからに乾燥した状態では植物は育たないのです。

(※稲は水にどっぷり漬かって育つ植物)









マルチができない訳がある

 昨年植えた苗には、約4割の面積でマルチを敷き、残りの6割の苗にはマルチを張るのを断念しました。今春植え

 た苗は全くマルチをしていません。

マルチは効果が高いのになぜしないのかと思うかもしれません。理由があるのです。


 大変な労力がかかる

果樹の苗にマルチを張る場合、苗を植えてから

後に張らなくてはなりません。

果樹の苗は大きく、根も縦、横30~40㎝ぐらい

あり、また、植えるときも根の間に細かい土が入

るように丁寧に植えなくてはなりません。


野菜のように、最初にトラクターの専用アタッチ

でさっとマルチを張り、後から苗を差し込んで植

えるような簡単なことは、果樹ではできません。




(マルチ張り風景 2021年)

 ・半分の幅のマルチを、真ん中で張り合わせる方式を試行。

 ・畝(うね)の両側にユンボで溝を掘り、マルチの端を埋め込みます。

 ・両方から真ん中に引き寄せ、テープやホッチキスで留める。

 

 ※アルバイトの高校生とともに、試行錯誤しながら張りました。



 修復にも多大な労力


  

せっかく張ったマルチが、一晩の強風で

ボロボロにはがされたこともありました。


マルチの上に石を載せたり、ハウスバンド

(丈夫なひも)で固定したりもしました。


まさに悪戦苦闘。






 (強風ではがされたマルチ)


2年目の肥料のため、剝がさなくてはならない

 カボスの苗を植える際に、「エコロング」という肥効調節型(じわじわと長く効く)の肥料を、根の周り

 に施用しています。これをやっておけば、1年間、肥料をやらなくて済むのです。


 ところが、この「エコロング」は180日タイプ(6ヵ月)を使っており、初年度の生育期間中は十分肥

 料が効いているのですが、2年目に入る春先には、もう一度マルチの合わせ目を剥がして2年目分の「エ

 コロング」を施用して土と混ぜなくてはなりません。この作業に何日かかかります。


 え~い 剝いでしまえ


 ということで、最初の方の生育良好の写真は、1年間経過後にマルチを剥いでしまった写真なのです。

 1年間マルチを張っていると、根も広く、深く伸びて乾燥にも強くなります。また、肥料も施用の回数

 は増えますが、一般的な化学肥料(有機入り)を上からパラパラと撒くだけで済み、作業効率は良くな

 ります。 



 春先は何かと忙しい

   「おもとの丘」では、毎年苗を植えていっていることから、樹齢の異なる園地が混在しています。

   新たな植え付け作業の他に、2年目、3年目の幼木園の肥料散布、4年目以降の結果園のかいよう

   病の防除、除草剤散布、草刈り作業 等、大変忙しいのです。


         何かいい方法はないか 

 


 堆肥を厚く敷くのがよいかも

(①番圃場)

 植栽後2年目





最初に載せている①番圃場の、マルチを

剥いだ後に堆肥を敷きました。


堆肥を敷くと、乾燥防止や土づくり効果

が期待でき、また、ユンボで作業をすれ

ばマルチを敷くよりはるかに楽にできま

す。

   

 


2番圃場はなぜ堆肥を敷かなかったのか

 生育の悪い2番圃場には、堆肥を敷く予定でした。そのためにキープしてあった堆肥が、他の用途に使われて

 しまい、今、うちの農場には堆肥の在庫がありません。(あ~あ)


 畜産農家と話をして、堆肥をもらうように段取りをしているところです。本来は、植え付け後直ちに堆肥を敷

 いて初期生育をよくする計画だったのですが、残念です。

 今後、2番圃場も手厚い管理をして、秋頃には元気な姿をお見せできると思います。



 また今回も、「長い」「字が多い」「くどい」とか言われそうですが、「おもとの丘」の悪戦苦闘を書きました。 

 最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます。



                                      ( おもとの丘の長老 )    


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