( おもとの丘奮闘記 ⑬ )
おもとの丘奮闘記と銘打って書いてきて13回目になりますが、今回のことを1番最初にに書くべきであった
かもしれません。とてもひどく、悪戦苦闘して、何とか被害を最小限に抑えた事件があったのです。
なんじゃ こりゃ~
「おもとの丘」の運営会社は「(株)未来農林」と言います。会社設立が平成29年6月で、初めて苗を植え
たのが翌年の平成30年3月でした。
私はあるところを退職し、4月3日から(株)未来農林に出社したのですが、その日の午後、若いスタッフに
案内してもらって、苗を植えた圃場を見て回りました。圃場を見て・・・
「はあ~?」 「どうして?」 「なんじゃこりゃ~」
苗が枯れている
植えてからわずか1週間くらいしか経っていない苗が、葉が茶色になり、枯れていっているのです。
しかも、なぜか株回りに石灰が大量に
撒かれています。
( 枯れている苗 )
果樹に関わってウン十年になりますが、こんなひどい植え方を見たのはは初めてでした。
苗は、かぼすとユズで全部で2,566本植えましたが、そのうち、約60%ぐらいが危機的状況にある
と判断しました。
圃場写真 ① ほとんど全部の苗が枯死寸前
圃場写真 ② この列も枯死寸前、苗は虫の息でした。
どうしてこんな植え方をしたのか
話を聞いてみると、経緯は次のようなことでした。
・園地の造成は、自社で施工。重機の得意な社員がユンボで造成。
・植え付けは、外部の林業系の会社に全面委託。
・事前に植え方の指導は一応受けた。
・石灰は、本来は植穴の中に入れるのが正しいが、あとで上から撒いてもよいといわれたので、
上から1株に2㎏撒くよう委託業者に指示した。
ひどい植え方
木の根や石も取らず、
ただ寄せただけ
石や土くれをそのまま
寄せただけ
根の周りはすき間だらけ
これでは枯れるわな~
双方に行き違いが
( 農園側の間違い )
・果樹に関して、全くの素人であった。
・苗を植える園地は、面を造れば、後は植え付け業者が全部やってくれると思っていた。
(本当は、面を造成し、植える場所の石や木の根を取り除き、植穴に堆肥、ようりん、苦土石灰
を入れてよく混ぜる。ここまでの作業をして、後は業者に任せるべきだった。 )
・植え付け作業の進捗を見ていなかった。
(全面委託したとはいえ、途中の経過を見て疑問を持つべきであった)
( 植え付け業者の間違い )
・林業系とはいえ、専門業者としてずさんな植え方。
杉やヒノキの植え方と、果樹苗の植え方は違います。しかし、苗の植穴に石や土の塊がゴロゴロ
していたり、木の根も取らずに土を寄せただけという個所も多くありました。
・果樹をなめていたのか、あるいは、知っていて工期内に終わらせるため、確信犯でこんな植え方を
したのか不明。
救急救命作業開始
次の日から、苗を助けるために救命作業を始めました。業者に言っても次の現場に行ってしまい、いつに
なるか分かりません。苗が全滅してしまいます。自分たちでやるしかなかったのです。
まず、作業をするのにも道具がない。ホームセンターに行って、鍬、手ぐわ、スコップ、水タンク
ホースなどを買いました。水を撒くのにも動力噴霧器がない。(注文済みだが、納品まで日数がかかる)
(作業手順)
・石、土くれ、木の根を取り除き、根の周りを細かい土で埋める。
・苦土石灰を周りに散らせる。
・丸い土手を作り、水をたっぷりやる。その際、下の方まで水が入るよう竹でつつく。
ただ水を撒いてもダメなのです。植穴の根の周りが
スカスカだと、すぐ乾いてしまいます。ちょっと溜
まって、数分後に緩やかに浸み込むのが理想的。
場合によっては、苗を一旦引き抜いて一から植え直
ししたものもあります。
この作業、4月4日から始めて5月中旬まで約1か月半かかりました。圃場毎に苗の状態を見て、緊急性の高い
圃場から優先して作業を行ない、3人で正味30日間くらいで、2,566本全部を植え直ししました。
それから、乾燥防止と肥料分の供給のため堆肥を株回りに敷きました。
あとは、苗の生命力に期待して、かたずをのんで見守っていました。
復活した!
葉が落ち軸だけになった苗から、芽が出てきました。全部の苗ではありませんが、環境を改善すれば植物は蘇りま
す。
左 :軸がまだ緑色で健全・・全体から発芽
上 :軸はほとんど枯れた・・一番下から発芽
左 :軸が上半分が枯れた・・半分から下で発芽
93%の苗が助かった
当初60%ぐらいの苗が枯れるのではと心配しましたが、結果的に7%だけ苗が枯れました。この7%の苗は
手遅れだったのです。
しかし、ヒーヒー言いながら1か月以上作業をして、被害をずいぶん軽減できたので良かったと思います。
もし、あのままであったらと思うとぞっとします。
枯れた7%の苗は、次の年の春に新たに苗を購入して補植しています。
現在の姿は?
写真①の現在 (令和4年5月)
写真②の現在
すっかり元気になりました。
写真①と写真②の圃場は、平成30年3月に植えて今年で5年目になります。一番最初の年に植えたので、Ⅰ期
(いっき)圃場と呼んでいます。
我が農場は、苗を植えてから3年間育成、4年目に初結果ということを基本としていますので、このⅠ期圃場も
昨年初結果させました。あの状態からよくここまで復活したと、スタッフ一同感無量です。
以後、人任せにしない
これ以降、Ⅱ期~Ⅳ期まで新植をしましたが、人任せにせずに、助っ人(アルバイト)の協力は得ながらも自分た
ちで丁寧に植えることにしました。
この経験を「貴重な経験」と言うべきか「おぞましい記憶」と呼ぶべきか、しかし、二度とはごめんです。
「不勉強」「無関心」「丸投げ」はいけませんなあ。
( おもとの丘の長老 )
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