〔 おもとの丘奮闘記2024-④ 〕
県内全域かぼすが少ない
かぼすは4月に芽が出て、5月に花が咲きます。我が農場「おもとの丘」でも、5月の段階で花が少ないことはわかっていました。苗を植えて3年間育てて、さあ今年からかぼすを成らせるぞと予定していた幼木の園地でも、パラパラとしか花が着いておらず、また、7年程度のほぼ成園の園地でも樹によってばらつきが大きく、全体的に着果量は少ないのでがっかりしています。
県下の他の産地の状況を聞いてもやはり花は少なく、全県的にかぼすの生産・出荷量は昨年に比べてかなり少ない状況です。花(果実)の多い年を表年(おもてどし)、少ない年を裏年(うらどし)と呼んでおり、今年は裏年です。
市場での青果販売も少なく、加工原料の確保でも関係者は走り回っています。

( 芽(葉)ばかりで花の少ない樹 )
「隔年結果」(かくねんけっか)とは?
果樹は永年性の作物で、何十年も生きて毎年果実を成らせてくれます。人為的な結実管理(摘果等)をせずに自然の状態で実を成らせると、ある年にたくさんの実を成らせた翌年は、花が少なく実も少ないという現象が起こります。毎年ではなく、1年おきに実が成るので「隔年結果」と呼ばれています。ただしかぼすの場合、きちんと1年おきではなく、2年裏年(花の少ない年)になることもあります。かぼすは、柑橘類の中でも着花の生理がデリケートで、ちょっとした環境の変化で花が消えてしまうことがあります。
不思議なことに、この隔年結果の波は個々の園地にとどまらず、みかんなどでは全国的に同じ傾向になったりします。(かぼすの場合は大分県全域)これはやはり気象の影響が大きいと思われます。

〔 適度に花の着いた枝〕
果樹の種類、品種で隔年結果の程度は変わる
一般的に、ブドウやナシなどの落葉果樹と比べて、柑橘類(かぼす、みかん、中晩柑類)は隔年結果しやすい果樹だと言われています。落葉果樹類は、よっぽどの気象災害がない限り花が少なくて生産量が大幅に少なくなったということはありません。これは、花芽分化期(花の元ができる時期)の違いも関係しているかもしれません。落葉果樹の花芽分化期は7~8月で、柑橘類は1~2月です。柑橘類は、光合成で作られたデンプンを葉や枝に貯めて、このデンプンが十分にあると1~2月に花芽ができやすくなります。ところが、夏から秋にかけて異常な乾燥が続いたり、冬に寒風で葉が落ちてしまうと、デンプンが不足し花ができなくなります。
柑橘類の中でも、種類によって隔年結果の程度は変わります。中晩柑類(甘夏等)は、毎年花がたくさんついてあまり年による変動はありません。温州みかん(普通のみかん)は中程度、かぼすは隔年結果が激しいと言われています。非常にデリケートな柑橘です。
※2022.5.11「カボスの花は気まぐれ」もご覧ください。
生産量が大きく変動すると、販売にも影響が
かぼすは果実類の中でも「嗜好品」です。食事にさわやかな香りと酸味を加え、料理のグレードを上げます。以前は和食が中心の用途でしたが、最近、西洋料理にも使われるようになりました。「おもとの丘」でも、飲食店との取引も増えてきました。
しかし、隔年結果して生産量・出荷量が不安定だと、「かぼすが手に入らないのなら、輸入レモンを使うか」といって、せっかくかぼすを使ってくれていた飲食店さんが離れていってしまう懸念があります
技術的に隔年結果は解消できないか
隔年結果は気象的な影響が大きいとはいえ、栽培の技術的に解消はできないのでしょうか。結論から言うと、ある程度の生産量の平準化は可能です。しかし、完璧にはできません。


〔 弱い樹にはべったり花が着く 〕 〔 強い樹には花が着かず、さらに樹が暴れる 〕
しかし、果実は小さく、樹も年々弱っていきます。 強い枝には花が着かず、来年もおそらく不作
( 隔年結果の解消法 )
・裏年(花の少ない年)にはできることは少ない。表年に工夫する。
・表年には適度の肥料を与え、樹が弱りすぎないようにする。
・ 〃 剪定は、切り返し剪定をところどころに入れ、新芽も適度に発生させる。
・ 〃 着果制限をする。(摘花や摘果で成っている量を制限する。)
・裏年には肥料の元肥は控え、樹ごとに花の多少で実肥を散布する。
・ 〃 剪定は控えめにし、間引き剪定で行なう。
とまあこのような栽培管理が厳密に行なえれば、隔年結果は徐々に解消されて生産量は平準化されていきます。
しかし、このような管理がきっちりできるか労力的・人的な悩ましい問題が残ります。かぼすの販売単価が高く、
1個何百円かで売れるのならば労力を投下して全力で管理しますが、そうもいかないので苦慮しています。

〔 適度な樹勢、適度な着果〕 こういうかぼす園を目指したい
今回はいささか技術的過ぎたかなと反省しています。ご容赦ください。
さて、こういった農産物の豊凶(豊作と凶作)の問題は世界的にもたびたび起こります。
穀物ではオーストラリアやアメリカのカリフォルニアの水不足、オレンジではブラジルでの 寒波や干ばつで、輸入のオレンジ果汁が手に入らないとか。直近では、カカオ豆の不作でチ
ョコレートが高騰しているらしいですね。近年、世界的に気象が乱れていると感じます。
工業系の人や文系の人と話していて、農業はどうしてきちんとできないのか。などという無
知なことを言われることがあります。
答えは 「生きものだから」 です
無機質なものを扱っていると1+1=2でしょうが、有機質でかつ生きているものを栽培し
ていると、生産量や品質を左右する要因がたくさんあるので、1+1が0.1になったり、
3になったりもします。
とはいえ、そんなことは言ってはおられませんので、隔年結果防止に取り組んでいきます。
( おもとの丘の長老 )
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