〔 おもとの丘奮闘記2023-⑭ 〕
作ったかぼすを出荷したい
何を今さらと思うかもしれません。しかし大分県内では、かぼすは庭先に1~2本植えてあったり畑に少数あっ
たりして、結構放任されている例が多く見られます。かぼすは香酸柑橘で酢が使えればよいと、自家用では何も
しなくても結構成って使えるのでよいという考えです。これができたかぼすです。
一方「おもとの丘」はかぼすを販売する農場ですから、酢も大事ですが、商品として外観が重要になります。
かぼすを切って食卓に乗せるときに、きれいな緑色のかぼすと病気や傷、色ムラがあるようなかぼすでは、料理
の味にまで影響します。
農薬散布や肥料の施用は当然行なっていますが、それに加えて「枝抜き」「摘果」「葉摘み」という果実の外観
を良くする作業が必要になります。つまり作ったかぼすです。
放っておくとやぶになる
春先に剪定作業を一応行なっているのですが、花が着く前に強い剪定をすると花が少なくなり隔年結果(かくね
んけっか:年により花着きが不安定になる)する恐れがあるので、軽く剪定しています。
4月になり新芽が発生します。(春芽)すると、枝が混みあってやぶになり、かぼす果実に光が当たらなくなっ
てしまいます。
(芽がたくさん出てやぶになった樹)写真①
果実は外から見えない
(樹冠内部の様子)
樹のふところ部分、光は入らない
「枝抜き作業」の目的
枝抜き作業の目的は大きくは2つです。①かぼす果実に光を当てて、ムラのないきれいな緑色のかぼすにするこ
と。②枝を適度に透かして、農薬が均等にかかるようにすること。(混みあっているとかいよう病が多発する)
かなり大変な作業です
かぼすの生理落果も終了し、今から「枝抜き作業」に入っていきますが、かなり大変な作業です。花を着けること
を最優先に考え剪定は軽くしていますので、まあ枝がウジャウジャでています。この枝のうち、かぼすの成ってい
ない立枝、果実にかぶさっている枝、ふところ(中心部)を埋めて樹冠内部に光が入らなくしている枝を抜いてい
きます。熟練者でも1本の樹に30分前後かかります。これがウン千本あるかと思うといささかうんざりします。
果実が成っていない立枝を切る) → (まだまだ枝が多い)
( 枝抜き完了樹 ) 写真①の枝抜き後 (内部の果実にも光が当たるようになった)
葉を落としすぎてはいけない
いくら果実に光を当てるためとは言え、ばっさばっさと枝や葉を落としすぎてはいけません。かぼす果実を太らせ
るために一定の葉の枚数が要ります。(葉果比:ようかひ:果実1果当り何枚の葉を要するかという基準)
また、春枝が来年花が着く結果母枝(けっかぼし)になるので、実の成っていないやや弱めの春枝を来年用に残し
ておかなければなりません。
落とす葉の量はできれば20%以内、多くても30%以内にする。
他の果物では当たり前
かぼすの枝抜きの話を書きましたが、この後、摘果や葉摘みをやろうと思っています。露地栽培のかぼすでは、こ
ういった作業はあまりやりません。(ハウス栽培や長期貯蔵用かぼすは行います。)
しかし、落葉果樹ではかなり細かい作業を普通に行なっています。販売単価も高いですが・・・。
(ブドウ)芽かき、摘芯、花穂整形、ジベレリン処理、摘粒、摘房、袋掛け 等
(ナ シ)芽かき、荒摘果、仕上げ摘果、誘引、袋掛け 等
品質が良くなると販売単価も上がる
かぼすの品質とはほぼ外観です。土壌改良や施肥はおもとの丘内では同じように行なっているので、味は農場内で
は同じと思われます。(十分美味しい)
(おもとの丘の品質区分)
特 撰・・・傷、病害虫被害、色ムラが全くないもの(厳選品1%未満)
標 準・・・軽微な傷、色ムラあり
徳 用・・・やや目立つ傷、色ムラあり
原 料・・・青果で販売できないもの(単価安い)
それぞれの区分ごとに販売単価は違います。農場の売り上げを伸ばし経営を向上させるためには、今から出荷まで
の期間、果実の外観をよくするための各種作業を真面目にやることだと思っています。
まだスタッフは枝抜き作業には入っていません。現在は、私が教材用のモデル園にする
ために作業を行なっているところです。
篤農家の技術を数値化、マニュアル化して、若い人が習得しやすいようにしようという
動きがあります。これには賛成です。しかし、枝抜きや摘果は色々な要素が絡み、なか
なかマニュアル化できそうにありません。それなりのセンスが必要です。
やって見せて、試しにさせてみて合否を決めようか。「アカ~ン不合格」
( おもとの丘の長老 )
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