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果実の「種なし」の話

更新日:5月31日

( おもとの丘奮闘記㉓ )



 おもとの丘が出荷しているかぼすの品種にも、種なし品種(種が極めて少ない)の「香美の川」があります。

 今回は、いろいろな果実の種なしについて書きたいと思います。


植物にとって種は大事

 ほとんどの植物に種があります。これは当たり前の話で、種がなければ子孫が増えないわけですから、植物にと

 っては死活問題になります。

 種を包み込んでいる果実には、その大事な種を保護する役割と、鳥や獣が種もろとも果実を食べて遠くでフンを  することで、生息範囲を広げるという役割があります。


 人間が、おいしい果実のみを求め種が邪魔というのは、植物にとっては不当な批判なのです。

 しかしそうはいっても、人は果実に対して、よりおいしくかつ食べるのに面倒くさくないものを求めます。

 よって、いろいろな果実で「種なし」がもてはやされるようになりました。

 以下、各種果実での種なしを紹介します。



種なし果実にするためには、いろいろなパターンがある

 いろいろな果実で「種なし」が販売されていますが、種なしにするためにはいろいろな方法があります。

 ジベレリン(植物ホルモン)を利用する方法、染色体の3倍体を作る方法、自然に種がないもの等。


〔 ブドウ 〕・・・ジベレリンを使う

  ブドウ品種の変遷は、キャンベル、デラウェア → 巨峰 → ピオーネ → シャインマスカット

                 (種なし)  (大粒黒)(大粒黒、種なし)(大粒、種なし、皮食)

  大粒、高糖度、種なし、皮ごとというように変遷しています。



現在大人気の「シャインマスカット」。

農林水産省の研究機関が作成した品種で、全国で広く

栽培されるようになった。

高級感があり、種なしで皮ごと食べられる。








                       「ピオーネ」大粒、種なし


ブドウの種なし化(無核化)の方法は、ジベレリンという植物ホルモンを使います。このジベレリン、植物がもと

もと持っている植物ホルモンですが、製剤化され、いろいろな植物にも利用されています。

使用法は、開花前に1回(無核化)と開花後に1回(果実肥大)使用されます。


シャインもピオーネも、ジベレリン処理することで房や粒の大きさが増し、大変見栄えの良い果実になるため、贈答品で大変人気があります。


 (私見)いささか昔を知っている私としては、種ありの巨峰でよく熟れたものは捨てがたいなあ。皮と実の間に果

     汁がたっぷりあって、ジュルっと食べるのが良いなあ。




〔 スイカ 〕・・・コルヒチン処理で3倍体

 

 スイカを食べるときに種が多いと嫌がる消費者は多いと思いますが、「種なしスイカ」を最近スーパーで見かけな

 くなりました。調べてみると、栽培が手間がかかり減ってきたそうで、一部、韓国からの輸入品はあるようです。


  ・通常、生物の染色体(遺伝情報が詰まっている)は同じものが二つずつあるので2倍体と呼ばれています。こ

   の染色体が奇数しかないものは生殖能力がありません。なぜなら、生殖細胞には減数分裂で半分の染色体をも

   って受精するので、奇数だと割り切れないからです。


  (処理法)スイカの苗が小さい時にコルヒチンというアルカロイドをかけます。するとなぜか染色体が2倍にな

       り、4倍体のスイカになります。これの花に普通の2倍体のスイカの花粉を受粉させると3倍体にな

       ります。


  (私見)まあ、スイカは種なんか気にせず、かぶりついて食べましょう。おしりから芽は出ません。




〔 ビワ 〕・・・3倍体品種を育成


 ビワは果実の中に大きな種が3~4個入っており、「種が邪魔やなあ」とか「実の部分が少ないなあ」とか思った

 ことがあると思います。しかし、千葉県で種のないビワが開発されています。



 




左:種なし品種「希房」  


右:種あり品種





(千葉県庁HPより)


 4倍体品種を作成あるいは探して、2倍体品種を交配して3倍体の個体を作成。その200固体の特性調査をして

 優良な個体を選抜、「希房」と命名。


 (私見)この品種のネット通販を見てみると、希少価値もあってとんでもない価格で販売されています。

     お金のある方は買ってみてください。


    ※シャインマスカットとビワの写真は、HPからお借りしましたので解像度が悪い写真に

     なっています。ご容赦ください。




〔 かぼす「香美の川」〕・・・突然変異(枝変わり)

 

 おもとの丘で栽培されている「香美の川」について説明します。


 「香美の川」は昭和55年に大分県津久見市で発見されました。通常の品種を栽培している畑で、他と違う変わっ

 た果実が成る枝があり、よく調べると、やや小玉ながら種はほとんどなく、果汁もフル―ティであったので、品種

 登録をしました。



                                        〔 かぼす 香美の川 〕


 時々、突然変異が生まれる

  農家が経済栽培している果樹の苗は、ほぼ100%接ぎ木をしています。挿し木で増やす果樹もありますが、

  いずれも栄養繁殖(えいようはんしょく:交配をしないコピー)ですから、基本的に苗の遺伝情報は同じで、

  同じ品質の果実が成ります。


  ところが、全ての生物は進歩的変化(いわゆる進化)を義務付けられていますので、接ぎ木苗であっても、

  突然変異が時々出てくるのです。


  「香美の川」の場合、通常品種の樹の一つの芽が突然変異を起こし、一つの枝にちょっと変わったかぼすの

  実がなるようになったものです。これを正式には芽状変異(がじょうへんい)と言い、一般的には枝変わり

  (えだがわり)と呼んでいます。



 完全に種がないわけではありません

  おもとの丘では、「香美の川」を種なし品種として販売しています。しかし、いつでも完全に種が入らない

  というわけではありません。通常品種の「大分1号」が1果当り20個前後種が入っているのに比べ、時々

  1~2個入っている程度です。いろいろな処理をして種なしにしているなら、種が入っていることは栽培者

  のミスですが、これは品種の特性です。お許しください。



  

   「香美の川」は今年から出荷を開始しましたが、果実が太る時期に乾燥が続いた時期がありまして、

   果実が小さいのです。注文していただいたお客様には大変好評をいただいていますが、日に日に箱

   に詰める果実が小さくなっています。


   できましたら、「香美の川」のご注文は9月に入ってからにしていただくと助かります。

 

   我々農場スタッフも、毎日「香美の川」を励ましています。

          「がんばれ!」 「よ~し よしよし」 「気合いだ~!」


                               

                                   ( おもとの丘の長老 )   


  

 

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