〔 おもとの丘奮闘記2023-⑬ 〕
咲いた花全部が実になるわけではない
我が農場(おもとの丘)のかぼすの花は、例年より早く5月上旬に咲きましたが、現在は生理落果(せいりらっ
か)も終わり、残った幼果がすくすくと育っています。
生理落果とは?
かぼすの花はたくさんの数が咲きますが、それが全部実になるわけではありません。開花後一定の時期になると、
かぼすの樹が自ら実を落とします。これは、植物生理上では自然なことで、人為的に落果を止めることはほぼでき
ません。
炭水化物の不足が原因
生理落果の原因としては、光合成によって作られる炭水化物(でんぷん)が樹の中で不足するためではないかと
言われています。4月には新しい芽(春芽)が出て展葉しますが、5月の花が咲く時期にはまだ新しい芽(葉)
の光合成能力は低く、本来は果実にいく分の炭水化物(旧葉や枝に蓄えられている)を春芽が使ってしまうので
はと推測されています。
まあ平たく言うと、「これだけの貯金では果実全部は育てられませんよ」というところでしょうか。
2回波がある生理落果
生理落果には2回の波があります。まず1回目は、開花から7~10日頃に果梗(軸)ごと落ちる第1次落果、
2回目は果梗枝は残して果実だけがコロンと落ちる第2次落果です。6月15日時点で、第2次落果もほとんど
終了しています。
(全部落果した枝:枝が弱い) (2~3個落果した枝)
(地面に落ちた果実)
前に落ちた果実は黄化、最近落果した果実は緑色
残った果実も、全部「良いかぼす」になるわけではありません
さて、生理落果せずに残ったかぼすの幼果は、8月中旬の出荷に向けてあと2か月の間、すくすくと肥大していき
ます。
大分県では、庭や畑に自家用としてかぼすの樹を植えている家が多いのですが、自家用ならば収穫までそのままで
す。ところが、かぼすを販売するために栽培している我が農場「おもとの丘」では、より「良いかぼす」を出荷し
てより収益性をあげるためにいくつかの作業を行ないます。
摘果(てっか)をします
樹に成ったままで果実を選別して、悪いものを人為的に落とすことを摘果と言います。家庭用ならば傷があろうと
多少虫にかじられていようと酢として使えますから、別に問題はありません。摘果はしません。
しかし販売する場合は、外観で等級(商品ランク)が変わりそれに伴って販売単価も変わってきますので、このま
までは農場の経営にも影響してきます。悪い果実を落とし、良い果実に養分が行き渡るよう摘果をします。
この摘果作業は労力的に大変で、うちでも結果樹園(実を成らせている園)全部をきちんと摘果できるかどうか悩
ましいところです。
①(遅れ花で小さい果実が混じっている) ② ( 傷 果 )
摘果する果実
①小さい果実が混じっている・・開花時期がずれて出荷時期が揃わないので、小さい果実を落とす。
②傷のついた果実・・・「標準」品質では出荷できず、「お徳用」になるので販売単価が下がるため、
摘果する。ただし、着果量が少ない年は残す。
枝抜き、葉摘み
摘果の他には、「枝抜き」や「葉摘み」という作業もあります。一般的な柑橘類は成熟してから収穫するので黄色
の果実ですが、かぼすは未熟果を主として出荷する(黄かぼすもありますが)ので、鮮やかな緑色が命です。
この緑色、葉が茂っていたり果実に葉がぺたりとくっついたりすると、薄くなったりムラになったりします。結
果、商品ランクが下がり販売単価も安くなります。よって、混みあった枝を抜いたり、果実にかぶさっている葉
を取り除いたりする作業が必要になります。
この作業もとても手がかかります。さて、どの程度できるか悩ましい限りです。(後日書く予定です)
かぼす園の作業は多岐にわたっています。作業道をユンボで修復したり、草刈り機で何日も草 刈りをしたり防除や除草剤散布、樹勢に合わせて加減しながらの肥料散布等、力仕事系の作業。
一方、今回紹介したような摘果、枝抜きや葉摘み作業は、かなり繊細なセンスを要する作業で
す。
剛もあれば柔もあるかぼす栽培。うちのスタッフには、バランスよく育ってほしいと願ってい
る今日この頃です。
( おもとの丘の長老 )
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