( おもとの丘奮闘記2023-③ )
(自分たちで作業道整備)
しばらく赤字が続きます
果樹園を1から始めると、しばらく赤字が続きます。
これは至極当たり前の話で、永年性の作物である果樹は、植えてから何年間かは育成期間(樹を大きくするため
果実は成らせない期間)があり、収入はありません。かぼすの場合は、育成期間を3年間としています。
また、農園拡大計画の最終的な目標面積(例えば20ヘクタール)を一度に植えることができれば、4年目から全
園で収穫が始まり、年々生産量や販売量が増加し、赤字の期間も短くできます。
ところが、広い面積を一気に植える場合、園地の造成の問題、植え付けの補助事業の上限面積の問題、植え付けの
人員確保の問題、資金繰りの問題等々の課題がたくさんあり、小面積ずつ植えるというのが現実的です。
おもとの丘では、こういった理由により毎年一定面積ずつしか植えられない状況です。特に、園地の造成も国の事
業で行なっていますので、園地ができた分だけ植えるということがここ数年続いています。(2.5~1ヘクタール)
つまり、収益性という観点から見ると、「急激な向上」ではなく「緩やかな向上」ということが言えます。この期
間にやるべきことは、できるだけ節約して初期投資額を減らすことです。
以外に知られていない果樹園の特性
果樹園経営にはこのような特性があるにもかかわらず、意外に知られていません。
①数年前○○データバンクの調査員の方が見えて、業務内容や経営的な数字を教えてほしいと言われましたが、ま
だ最初の苗を植えたばかりで、当然、売上は0。10年後においで下さいとお断りしました。
②国の担い手育成関係の補助事業に応募したところ、「会社の売り上げが0というのはおかしい」と問い合わせが
ありました。こちらとしては「はあ~?、あ~あ」という気分です。
節約して初期投資額を減らす
収入が少ない以上、経費を減らすことは当然の流れで、色々と工夫して経費削減に取り組んでいます。
「業務心得」・・・「肥料、農薬等は複数の購入先を検討する」
最近、ウクライナ情勢の影響もあり、肥料や農薬の価格が高騰しています。自分で作るわけにはいかず購入
することになりますが、複数の購入先を検討してできるだけ金額を抑えようとしています。
「業務心得」・・・「機械、道具類は必要なものは購入して、大事に長く使用する」
廃業したみかん農家から購入した、中古のスピードスプレヤー(SS)
導入時18年経過、現在22歳で、人に置き換えてみると90~100歳という大変な年寄り。
満身創痍で、しょっちゅう故障して修理しています。
SSは特殊車両で、新車で買うと1,000万円を超えてしまうので、なかなか買えません。
老体に鞭打って、今も頑張っています。
「業務心得」・・・「無料の資材(竹、木材、石)を利用する」
〔 石 〕
(園内に石がゴロゴロ) (溝を掘って石を入れ排水溝に)
〔 竹 〕
(防獣柵の一部に竹を使用) (幼木の支柱を自作)
「業務心得」・・・「高価なもの、製品としてないものは自作する」
〔機械格納庫の自作〕
SSやユンボを入れておく格納庫を自作しました。
骨格は使われてなかった足場用の直管で、ビニール
トタンは安いものを使用。
数年後にはきちんとした格納庫を作る予定ですが、
仮の施設で雨露をしのぎます。
以上、おもとの丘の節約を紹介してきましたが、大規模果樹園を目指して初期の頃に赤字になるのは当たり前の
ことで、決してさぼっている訳ではありません。
昨年、一番最初と2年目に植えた園地が結果樹齢に達して収穫しました。ネット通販での販売額も大きく伸び、
今後の販売に大きな手ごたえを感じています。さあ、今年の販売が楽しみです。
農場経営でタダの資材を使うのは良いことで、「タダより安いものはない」のですが、
人間関係では、回りにばかりお金を出させているとしっぺ返しを食らうことがあります。
「タダより高いものはない」にならないよう気をつけましょう。
〔 おもとの丘の長老 〕
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