〔 おもとの丘奮闘記2024-⑥ 〕
昨年から今年にかけていろいろと天候不順で、かぼすの樹や園地により大きなばらつきが出て、栽培管理に苦慮しています。中でも、隔年結果で果実の成りに大きな差が出ており、それに伴って樹勢や枝の伸びが樹ごとに甚だしく違うのです。
(隔年結果:10月4日「今年は裏年 難しい隔年結果問題」参照)
かぼすが成らなかった樹はガンガン伸びる
( 着果量が少なく、徒長枝が乱立してあばれている樹:4年目) 肥料はやれない。
幼木期は栄養生長が盛ん
かぼすに限らず果樹類は、植えてからしばらくの期間は栄養成長期(えいようせいちょうき)で、ひたすら体を大
きくすることに専念します。しかし、弱い苗であったり土が栄養が少なく痩せた土の場合、樹を大きくすることが
できず、栄養生長をあきらめて生殖生長(せいしょくせいちょう)に移行し、花を着けます。しかし小さな弱い樹
に花や実が成っても、肥大が悪く、また収穫量も少ないので農園としては困ります。
3年育成、4年目初結果が基本
「おもとの丘」では、苗を植えてから3年間はひたすら樹を大きくするための幼木管理をして、4年目に初めて花
が着き、実を成らせる(初結果)ことを基本としています。
しかし、3年間ひたすら栄養生長していた樹を4年目にスムーズに生殖成長に変えることは、とても難しい。
そこには高度なテクニックが必要になります。(3年目には肥料を少なめにし、剪定も軽い間引き選定 等)
大人の樹は何年目から?
かぼすが苗から育って大人の樹(成木:せいぼく)になるのは、一般的には10年前後と言われています。おもと
の丘では、早期に収穫量をあげるために苗の本数を多く植える「計画的密植栽培」を行なっていますので、7年程
度で成木(成園)と見なしています。この頃になると樹勢も落ち着いてきて、隔年結果も穏やかになるはずなので
すが・・・。
肥料をやってはいけない樹
(着果が少なくあばれている樹:9年目) まだ落ち着いていない。
着果量が少なく徒長枝が乱立している樹は、当然、肥料はやれません。剪定で徒長枝を外しながら結果母枝(けっ
かぼし:次年度の花が着く枝)は極力残し、刺激を与えないようにしてじっと見守らなくてはなりません。
来年花が多く着けば、樹勢は落ち着いてくるはずです。この園地は土壌が深く、コントロールが難しい。
肥料をやらなくてはいけない樹
当然のことながら、幼木や弱っている樹は肥料を適量やって樹勢を強くしなければなりません。
( 幼木:1年目 )
まだまだ大きくしなくてはなりません。
肥料をやって、栄養生長を促します。
堆肥も施用します。
( 弱っている樹 )
2024年夏の乾燥で弱った樹
秋になり雨は降ってかなり回復したが、肥料も必要。
( 弱っている樹② )
2023年の夏から秋にかけての乾燥で葉が黄化。
現状はかなり回復したが、肥料が必要。
( 今年たくさん成った樹 )
葉の濃さを見て施肥を判断。
葉色が落ちて弱っているようであれば肥料。
( 余談 )
施肥の考え方は作物ごとに異なります。
・1年生作物(稲、野菜類)・・・単位面積当たり基準量が決められており、全面にまいて耕起。
元肥60%、追肥20,20%等
生育の差は出にくい。
・果樹(柑橘類) ・・・・・・・基準量は決まっているが、成熟期に肥料が切れる方が糖度が上がる。
早生みかんは夏以降は肥料を控える。
・かぼす・・・・・春先に肥料が効きすぎると着花が不安定になるので少なめ、花着き後は緑色を濃く
するため肥料を効かせる。10,30,30,20%等
あるいは春肥をやらず、花を確認してから5月に初めて施肥する場合もある。
省力化に逆行
おもとの丘は大規模かぼす園を目指しています。まだ道半ばながら毎年苗を植えて栽培面積を増やしています。
限られた人員で大規模経営を行なうためには、機械化による省力化が必須です。将来計画では、肥料散布もトラ
クターに散布機のアタッチメントをつけて機械化する予定なのですが、樹ごと、園地ごとに生育が異なるため、
もうしばらくは手散布するしかなさそうです。施肥も早く機械化したいものです。
こうやって考えてみると、かぼすはずいぶん難しい作物だと感じます。花が着くか着かないか
は微妙で、実に気まぐれです。また、花が着かねば樹が大暴れするし、着きすぎると弱る。
いつまでも栄養生長してなかなか生殖成長に移行しない。最近の若いモンを見ているよう。
(早く色気づけということではなく、成長して落ち着けという意味)
( おもとの丘の長老 )
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