〔 おもとの丘奮闘記2024-② 〕
農業は、色々なこととの闘いと言われています。「病害虫」との闘い、「草」との闘い、「気象(天気)」との闘い、「販売」上の闘い 等。今回は「気象(天気)」について書いてみます。
つい先日、台風10号が大分県を通過しました。勢力が強く速度も遅いため、長時間の風雨で我が農場も甚大な被
害が出るのではと警戒していましたが、雨量は3日間で200㎜程度、風もそこそこで、園地のがけ崩れや防風ネ
ットの破損や樹の倒伏や枝折れなどの被害は、ほぼありませんでした。
この台風とても変な台風で、はるか遠方で災害が起こるほどの大雨を降らせたり、竜巻が起こったりと甚大な被害
を起こしましたが、すぐそばを台風の中心が通過したにもかかわらず、「おもとの丘」(大分県宇佐市)は無事で
した。被災された地域の方には申し訳ありませんが、スタッフ一同ほっと胸をなでおろしています。
〔 台風前の状況 〕
雨を渇望していた
かぼす農園の「おもとの丘」では、切実に雨を期待していました。なにせ梅雨明け後から1か月以上まとまった
雨が降らず、連日の猛暑、晴天で土がカラカラの状態だったのです。
( 乾燥の激しい園地での潅水作業 8月 ) 上から水を撒いても効きません。地中にパイプを刺しての潅水。
大変な作業ですが、やらざるを得ません。
土壌乾燥で果実は太らず樹は弱る
果樹は永年性作物で樹ですから、野菜などの1年生作物に比べると根が深く、比較的乾燥に強い作物になりま す。ただし、樹自体は枯れなくても、果実(かぼすの実)が太らなかったり樹が弱ったりします。
また、樹齢(樹の年齢)によっても乾燥に対する耐性は変わります。苗や若い樹に比べて大人の樹は、根が深
く伸びているため乾燥に強くなります。
「香美の川」が小玉傾向
我が農場では、通常品種の「大分1号」と種の少ない「香美の川」の2種類の品種を栽培していますが、もとも
と小ぶりな「香美の川」が乾燥の影響を受けて一段と小玉傾向になっています。
( 香美の川 )
今年は小玉傾向
事前に「小玉」と説明して販売しています
サビダニが発生
病気や害虫は、雨の多い少ないで発生するものが変わります。一般的に病気は、雨が多いと多く発生します。例え
ばかぼすの最凶病害の「かいよう病」は、雨で菌が拡散して大発生します。
一方、雨が少なく乾燥するとダニが多発します。おもとの丘のある圃場で、10日~2週間の間にサビダニが大量
発生してしまいました。油断していました。
( サビダニ被害果 )
サビダニが果皮について吸汁し、果皮が黒変して
商品価値がなくなる。
日焼けが発生発生
高温や強い直射日光が当たると、かぼすの果実が日焼けを起こします。温度や日照条件が同じでも、土壌に十分水
分がある場合は日焼けはあまり起きません。地上部と地下部のバランスが崩れると焼けてしまいます。
( 日焼け果 )
日の強く当たる部分が焼けた。青果では販売できず、
加工原料となります。
〔 台風後の状況 〕
台風の200㎜の雨はありがたかった
果樹園がからからに乾いている時に、10mmや20mmの雨が降ってもほとんど効果はありません。焼け石に
水で、土を掘ってみても表面から1~2センチが濡れているだけで、その下はカラカラです。
逆に大量の雨が一気に降ると、表面を激しく流れ土を押し流してしまいます。やや長時間でしとしとと降る方が
土の深くに浸み込みます。今回の台風では、やや強く降った時もありましたが、土が流れるほどではなく、かつ、
一定の降水量がありました。かぼすの樹にとってはありがたい雨でした。
一部の園地では、果実が柔らかくなったり、樹が弱ったりしている箇所もありましたが、この雨のおかげで元気
になりつつあります。
出荷最盛期
9月になり、露地のかぼすは現在出荷最盛期です。もともと今年は裏年で、花つきはやや少なく、生産量はやや少な目と予想していました。それに加えて土壌乾燥や一部害虫被害など障害もありました。
しかし、スタッフ一丸となって健全なピチピチのかぼすを厳選して、全国のお客様に発送しています。ある会社から
の大口の注文もあり、滞りなく発送できました。
「おもとの丘」は、かぼす農場を開園してまだ年数は少ないのですが、意気込みとして
倍々ゲームで出荷量を増やそうと頑張っています。しかし、毎年いろいろとあるもので
す。
「これが自然を相手にする農業の厳しさだ!」と、あきらめてしまえばそこで終わり。
「こんなひどい気象条件だったが、被害を最小限に食い止めた」というのが、農業の
プロですね。目指さねば。
( おもとの丘の長老 )
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