(おもとの丘奮闘記 ⑱)
かぼすが隠れています
当農場「おもとの丘」では、8月8日を出荷開始日として予定しています。あと3週間ちょっとです。
かぼすの果実はすくすく太っているのですが、出荷前にやるべきことがあります。
かぼすが葉に隠れているのです。
葉に隠れているかぼすを日が当たるようにし(摘葉)、良くないかぼすや団子状になっている実を落とす (摘果)の作業をやらなくてはいけません。

どこじゃ~
出ておいで
葉の陰に隠れて、緑色のかぼすは見えない

まるで保護色
擬態をしているよう
光が当たらないときれいな緑色にならない
なぜきれいな緑色にこだわるかというと、色ムラがあると品質評価が落ち、販売単価が下がるからです。
「おもとの丘」では、独自の品質区分を決めて出荷しています。
〇特 選・・・色ムラ、傷、病害虫被害のほとんどないもの
〇標 準・・・軽微な色ムラや傷のあるもの
〇お徳用・・・色ムラ、傷が目立つもの(かいよう病被害果は除く)
それぞれの区分で、販売単価は異なります。


(葉を取り除いた後) (大きく色ムラがある果実)
果実にかぶさっている葉を取り除くと、かぼすが姿を現します。色ムラがある果実や害虫にかじられた果実等。
果実の緑色は、直射日光が当たらなくても散乱光(さんらんこう:あちこちに反射して届く光)でもOKです。
悪いのは果実にペタッと張りついている葉で、葉緑素ができず白っぽくなります。このままの状態なら、「お
徳用」か「加工原料」に格下げになります。
摘果もします
果実を人為的に落とすことを摘果(てっか)と言います。団子状に固まってなっている果実を間引きしたり、
病気や虫の被害果、遅れて咲いた花でモノになりそうもない果実を摘果します。

(遅れ花)
右の果実が小さい

(着果過多)
大量に成っている

(害虫被害果)
病害虫被害果や遅れ花の果実は無条件で摘果します。 着果過多は、樹の勢いを勘案しながら適度に落とし
ます。
かぼすにそこまでする必要があるか?
ハウス栽培や貯蔵かぼすの農家は、コストがかかっていますから、より高く販売するために摘葉を行ないます。
しかし、露地栽培のかぼす農家では、摘葉までやっている例をあまり知りません。これは、労力をかけても1㎏
○○円くらい、10aで○○万円と、かぼすの販売にあまり期待をしていないのかもしれません。
「おもとの丘」は露地栽培なのになぜ?と思われるかもしれません。
果樹園を新規に開園すると、初期の収穫量や販売額が少ないのです。経費を抑えながらも、いかに販売金額を上
げるかが、長期の経営計画に影響します。(4/29付け「最初が厳しい果樹園経営」参照)
「おもとの丘」では、現在、全栽培面積8.1haのうち果実をならせられる結果樹園が3.6haしかありません。
残りの4.6haは育成中の幼木園です。この3.6haの結果樹園で、可能な限り販売額を上げることが重要です。
「できたかぼす」ではなく、「作ったかぼす」ならば、もっと販売単価は上げられるものと考えます。
( 余 談 )
柑橘類ではありませんが、リンゴも一級品を作るためにきめ細かな管理をしています。リンゴの赤い色も
日光が当たらないと色ムラになります。きれいなリンゴを出荷するために、「葉摘み」や「玉回し」作業
をする必要があるそうです。日本のリンゴは、味も外観も世界一と言われており、海外の富裕層に人気だ
そうです。
一方、省力栽培も提唱されており、「葉取らずリンゴ」や「加工専用リンゴ園」もあるようで、要は、そ
の農園の経営方針をどちらにするかということでしょうか。
賛否両論ある「摘葉」
生育期間中に葉を摘んで落とすことに異論を唱える人もいます。かぼすは隔年結果(かくねんけっか:年により
花(果実)が多かったり少なかったりすること)が激しく、生産が不安定です。これは、葉摘みなんかするから
やと言われます。一理あります。しかしこれは、黄色い柑橘しか経験のない人の理屈ではなかろうかと思います。
かぼすはもともと着花生理がデリケートな面があります。(5/11付け「かぼすの花は気まぐれ」参照)しかし、
春の剪定を控え花を確認してから、夏に摘葉、枝抜きをすれば影響は抑えられると考えています。

また今日もくどく書いてしまいました。失礼しました。
「男は顔じゃない、心意気だ」 と同じように
「かぼすは外観じゃない、香りと味だ」と 誰か言ってくれんかね。
( おもとの丘の長老 )
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