(おもとの丘奮闘記 ⑭)
生理落果が始まっています
かぼすの花が咲き始めてから約1か月半、生理落果(せいりらっか:自然に実が落ちること)をしています。
この時期になると、かぼすの樹が自分で実を落とすのです。
もともとは4個の果実があったが、
2個生理落果した
果梗部(実がなっていた場所)が
2個残っている
(果実だけ落ちるのは二次落果)
落果した幼果
なぜ生理落果は起こる?
植物生理学で説明されている生理落果の原因は、次のようなことです。
①新葉との競合で、光合成産物(炭水化物)が不足する。
春になると新しい芽が出て、展葉します。この新しい葉はまだ光合成能力は低く、旧葉で作られた
炭水化物を消費する存在で、果実と取り合いをしてぶんどってしまうのです。
②受精しないと落果する。
植物は基本的に受精して種子ができないと落果します。果実よりも種が大事なのです。しかし、柑橘
類の中では、温州みかんは受精しなくても実が止まります。これを「単為結果性(たんいけっかせい)
」と言います。
③その他の原因
梅雨の長雨での日照不足や排水不良での根の痛み、土壌の乾燥等、気象条件の影響で生理落果が多く
なると言われています。
生理落果は2回ある
柑橘類の生理落果は2回あります。
一次落果・・・花が咲いてあまり日数が経たない頃、果実と軸(果梗枝)が連結したまま落果。
二次落果・・・果実だけが落ち、果梗部は残る。今現在は、二次落果の段階です。
「摘果」をすべきか悩んでいます
「摘果」(てっか:人為的に果実を落とす)は果樹類の栽培では普通に行う作業です。果樹の種類ご
とに目的が違います。
・柑橘類・・・小玉果防止、傷果、病害虫被害果除去。
・ブドウ・・・房の整形(セット、摘粒)、着果量調整(摘房)
・なし・・・・小玉化防止、着果量調整
かぼすの摘果
生理落果が落ち着くと今年の着果量はほぼ決まり、かぼすの樹が「自分の力ではこれくらい が妥当な結果量」として実を成らせているのですが、
「かぼすの樹が考える基準と、人間が考える基準が違う」 のです。
農園側としては
①来年も果実が成る、隔年結果(かくねんけっか:年による着果量の乱高下)しない量か。
②果実が房状にかたまりで着果して、色ムラ果にならないか。 が心配になります。
特に②は、昨年初出荷して大きな問題となったことで、色ムラ果が多く品質(等級)が低い
果実が目立ちました。
昨年のパンフレット用
写真
(色も大きさも揃っている)
上の写真は「おもとの丘」の販売用パンフレットのために、きれいな果実を厳選して集めて
撮った写真です。いわば、我が農園のエリートたちです。
こんなきれいなかぼすは、そう多くはありません。
色ムラ果を減らせるか
(昨年の果実)
果実がくっついていた
箇所が緑色が薄い
かぼすがかたまりで着果していたり葉がかぶさっていると、日光が当たらず色ムラが出ます。このような
果実は中級~下級品になります。
色ムラは、未熟果ならではの問題
同じ柑橘類でも、熟してから収穫するものは色ムラはほとんど問題になりません。熟れると黄色くな
るので、分からなくなるのです。(温州みかん、デコポン等)
かぼすは、8月~10月上旬ぐらいまで緑(グリーン)かぼすとして販売し、その後は「黄かぼす」と
して販売します。この緑かぼすの時期だけが、色ムラが問題になっているのです。
外観はそんなに大事か?
かぼすを絞って酢としてのみ使うのであれば、外観はあまり重要ではありません。しかし、かぼすの鮮
やかな緑色は、料理(特に和食)に彩を与え、料理の格を上げるのです。立派な料理でも、病気や虫の
被害を受けたものや色ムラの激しいかぼすが添えられていては興ざめです。
「おもとの丘」の出荷基準では、①色ムラや傷等がほとんどないものを「特選」、②軽微な色ムラや傷
のあるものを「標準」、③それ以下のものを「お徳用」としています。それぞれで販売単価が異なり、
当然、外観の良いものが販売単価は高く、農場の経営面でも有利になります。
かぼすの品質は、外観で決まるのです。
さあ、頑張ろうかね
現在の着果状況
これぐらいでも、果実
が大きくなればダンゴ
状になる
今年は花着きにバラツキがあり、園の場所によっては果実が少ない箇所もあります。農場全体としての出荷量
は確保できるのか、しかし、やらないと品質の低いかぼすばかりになって売り上げは伸びないのでは。とか
悩ましい問題です。
梅雨に入りました。なかなか作業が進みません。
しかし、結果(実を成らせている)園全部はできませんが、雨の合間を縫って、可能な限り摘果、葉摘み、枝
抜きをやっていこうと思います。
過激にやると、樹が暴れて来年花が着かなくなる恐れがあるので、優しく優~しく。
( おもとの丘の長老 )
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