農薬について考える
- yoshiharutsuru
- 4月21日
- 読了時間: 5分
〔 おもとの丘奮闘記2025-② 〕
4月に入り野山の木々も芽吹き、春と思っていたら夏日の日もあり、なんだか気象が乱れているようです。
「おもとの丘」のかぼすの樹も、春芽が発生し、気の早い蕾もちらほら見えてきました。
この奮闘記も、1月に「画期的な造成法」でアップしてからしばらくご無沙汰でしたので、冬はネタがない
のかと思われるかもしれませんが、冬には冬の作業がたくさんあり、剪定や作業道の整備、防風ネットや防
獣柵の補修などで忙しくしていました。
さて、今回は農薬について考えてみたいと思います。
「おもとの丘」は減農薬栽培を目指しています
農業の作物は、稲や野菜等の一年生作物と果樹類等の永年性作物があります。また、栽培法も露地栽培や
ハウス栽培、農薬使用に関して言えば、無農薬栽培、有機栽培、減農薬栽培、通常栽培といろいろありま
す。

(スピードスプレヤー:SSによる防除)
露地の大規模かぼす農園の「おもとの丘」では、完全無農薬栽培はできません。
不要な農薬散布は減らし、かつ、一定以上の品質を生産できる減農薬栽培を目指しています。
農薬使用は危険か?
一般的にスーパーなどで販売されている野菜や果物は、基準を守りながら農薬は使用しています。一方、有機栽培
(オーガニック)や無農薬野菜などは、特殊なルートで特定の消費者に買われています。また、レストランなどで
オーガニック野菜のサラダなどが供されていて、他店との差別化を図っている例もあります。
「おもとの丘」では、使用基準を守って農薬を使用すれば、安全面は何ら問題はないと考えます。
日本には農薬取締法という法律があり、農薬の規格や製造、販売、使用に厳しい規制があります。(農林水産省
消費・安全局農産安全管理課農薬対策室:所管)
農薬を登録する際には、動物実験により安全性を確認し、使用基準として薬剤濃度、使用回数、収穫前日数などが
定められます。生産者はこの使用基準を厳密に守って使用することを義務付けられています。
「おもとの丘」でもこの使用基準は厳密に守っており、かつ、できれば農薬散布回数を減らしたいと考えていま
す。それは安全面というよりも、農薬代の経費面、散布労力の省力化が目的です。
農薬にまだ懐疑的なお考えをお持ちの方は、農林水産省と激論を交わしてください。一農場としてはこれ以上の
説明はできません。
日本の気象は
日本は温帯モンスーン気候ですので、比較的暖かく(北の方は寒いが)雨が多いのが気候の特徴です。よって、
作物によっては栽培しにくい不適地といえるものもあります。温度が高いと害虫が増え、雨が多いと病気が多く
なります。
果樹の世界では、ブドウは雨で病気が増えるのでビニールによる雨よけが必要になりますし、リンゴは、日本で
は25回前後の農薬散布が必要と聞いていますが、アメリカのワシントン州では雨が少ないので3回程度で済む
らしいのです。
作物によって農薬不使用の難易度は変わる
一口に農産物といっても、様々な種類の作物があります。農薬不使用の難易度は、その栽培期間によって大きく
変わります。危険にさらされる期間が長いほど困難になります。
一年生作物・・・葉菜類・・・比較的容易
根菜類・・・中・・・・・・葉を多少食べられても商品になる
果菜類・・・中~難・・・・葉→花→果実
水 稲・・・中~難・・・・葉→花→籾
永年性作物・・・寿命30~40年 難 ・・・・次年度以降にも影響がある
幹を侵す病気、害虫がいる→枯死
永年性作物のかぼすは、樹自体も守っていかなければなりません。
かぼすの病気、害虫
〔 病 気 〕

(かいよう病)
かぼすの最凶病害。細菌性の病気でなかなか
根治できない。
※その他「そうか病」や「黒点病」がありますが、
当農場では少ないので省略。
〔 害 虫 〕

(ゴマダラカミキリムシ)
成虫は枝や葉をかじって大した被害はないが、
株際に産卵して、孵化した幼虫が幹を食い荒ら
して、ひどい場合は樹が枯れる。

(カイガラムシ)
枝に寄生して樹液を吸う。尻から分泌液を出して
それに黒いカビが生え、果実の商品価値が落ちる。
虫の表面がロウ物質で覆われているので、普通の
農薬をかけても効かない。

( アゲハ蝶の幼虫 )
このアゲハの幼虫は、柑橘類の葉しか食べない
という厄介な虫。
保護色をしており、油断していると枝が丸坊主
にされてしまう。
植えて3年以内の幼木では、葉を食べられて成
長が阻害される。

( ミカンハモグリガ )
葉の表皮の下を、ガの幼虫が食害しながら動き回る。
絵を書いているように見えることから、エカキムシ
とも呼ばれる。
幼木期間(3年間)はこの虫の防除は必須である。
※「アゲハの幼虫」も「ミカンハモグリガ」も幼木期
(植えてから3年間:果実は成らせない)のみの防
除なので、殺虫剤を何回も使いますが、問題はな
い。
できるだけ工夫して農薬散布しています。
上記の病気や害虫が発生するわけですが、農薬もできるだけ工夫して散布するようにしています。
かいよう病・・・なかなかしぶとい病気ですが、ボルドー系製剤で予防的防除を徹底。被害果や被害枝の園外持ち
出しをして菌の密度を徐々に減らしています。(ボルドーは有機栽培でも使用可)
カミキリムシ・・樹が枯れると困るので殺虫剤は使いますが、樹幹下部のみに散布して果実には掛けません。
カイガラムシ・・通常の殺虫剤は効かないので、マシン油乳剤(有機栽培でも使用可)で物理的に虫の表面を覆っ
て殺虫。
※アゲハ幼虫とミカンハモグリガは、幼木期のみ。
数か月書いていなかったので気合を入れて書いたら、長編で字の多い回になってしまいました。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
農薬の問題は、各種の誤解と、また、過剰にイメージ戦略に使われている例が見受けられます。
できれば、な~んにもせずにきれいなかぼすが大量に生産できれば、こんないいことはありま
せんが、そんなに甘くはありません。
今後も、最適な時期に、基準を守りながら、必要な回数のみ農薬を使うようにします。
( おもとの丘の長老 )








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