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幼木の大敵「エカキムシ」

ある(おもとの丘奮闘記 ⑰)


 我が農園「おもとの丘」では、ほぼ毎年かぼすの苗を植えて面積拡大を行なっていますが、まだ実の成らない

 幼木園と実を成らせている結果樹園が混在しており、両方の管理をしているため、結構大変なのです。


3年間待つのだよ

 苗を植えてから3年間は実を成らせず、ひたすら樹を大きくすることに専念して4年目に初結果させることを

 基本としています。柑橘栽培の篤農家の中には「わしは2年育成で3年目には成らせる」という方もおられま

 す。

 しかし、おもとの丘の園地は全部新規造成地で、土があまり良くないのです。また、毎年2千数百本ずつ植え

 るので、幼木へのきめ細かい管理ができないというのが実情です。3年間育成します。

    

     ( 余 談 )

      その昔.、ボンカレーのコマーシャルで、落語家の笑福亭仁鶴さんが子連れ狼に扮して

      「大五郎 3分間待つのじゃぞ」と言ってましたな。若い人は知らないか。

      うちの農場は「実がなるまで3年間待つのじゃぞ」ですな。 


 

 夏芽の時期に「エカキムシ」が発生する


(エカキムシによる被害葉)


 幼虫が葉の表皮と葉肉の間

 を食害して、葉が縮れる。


 幼虫が食害した跡が、絵を

 書いているように見えるの

 でエカキムシと呼ばれてい

 る。




 柑橘類の芽(枝)は、発生する時期によって枝の名称や性質が違います。

   春芽(はるめ)・・・4~5月に発生、長さはやや短い、来年の結果母枝になりやすい。

   夏芽(なつめ)・・・6~9月頃に発生、強く長い、かぼすでは結果母枝にはならない。

   秋芽(あきめ)・・・10月以降に発生、充実が悪くほとんど利用できない。


 幼木は、夏芽で一気に樹を大きくすることで、未収益期間(実の成らない期間)の短縮や初期収穫量の増加が

 期待できます。強く長い夏芽を健全に伸ばすことが、幼木を育てる上で非常に重要なのです。

 ところが、夏芽が伸びるこの時期に「エカキムシ」が発生し、葉を縮らせ夏芽の生育を悪くします。



エカキムシとはどんな虫?                    〔和歌山県果樹試のHPより〕

       ( 幼 虫 )                       ( 成 虫 )

 

 エカキムシという名称は俗称です。、正式には「ミカンハモグリガ」といい、蛾の仲間です。

 野菜類でもエカキムシと呼ばれる虫がいますが、こちらは、「○○ハモグリバエ」といいハエの仲間です。


ミカンハモグリガとは 

 〇柑橘類だけに寄生し、他の植物には寄生しない。

 〇日本以外でも、世界中に広く分布する害虫。

 〇柔らかい新芽の葉に卵を産み、幼虫が食害する。

 〇初発生は6月頃で、この頃春芽の葉は固くなっているので被害は受けない。

 〇1世代(卵~成虫)は20日前後といわれ、年間で10~11世代発生する。



幼木に対するミカンハモグリガの悪影響

 ミカンハモグリガは、大きくは2つの理由で幼木に悪影響を及ぼします。

 

   ①葉の変形、光合成能力の低下により、夏芽の伸長や充実が抑制される。

   ②傷口から「かいよう病菌」が侵入して、かいよう病に罹る。 




(かいよう病被害葉)

       傷口から細菌が侵入

       かいよう病はかぼすの重要病害

       葉や枝、果実にも感染する 

  (夏芽の葉の変形)枝の充実不良



防除は大変!

 この虫の被害を完全に抑えるためには、防除(薬剤散布)は非常に大変です。

 何せこの虫は、20日くらいで成虫になって年間10~11回も発生するので、1回や2回防除してもほとんど効

 果はないのです。


  7~10日に1回防除、薬剤は3種類のローテーション

  我が農場では、6月以降7~10日毎にミカンハモグリガ対策の農薬散布を行なっています。

  浸透性の殺虫剤を使用しますが、それぞれの剤で残効性が異なるので剤に合わせて間隔を決め

  ています。

  なぜ3種類の殺虫剤をローテーションで散布するかというと、それぞれの農薬で年間使用回数が厳しく

  決められていること、また、虫に薬剤抵抗性が生じないようという配慮からです。


  一度散布すると約40日間効くという農薬(高濃度)が登録され、うちでも試験してみました。確かに

  効果はありましたが、価格が高い。何せ、通常5,000倍の濃度で使用する剤を100倍の濃度でかけるので

  すから高いわけです。あまり大きくない苗にかけても、10a当り20,000円ほどかかります。

  再考の余地あり。(メーカーさんもう少し安くしてもらえませんかねえ)



  こんなに殺虫剤をかけて安全性は?

  殺虫剤をこんなにバンバンかけて、大丈夫なのかと思われる人もいるかもしれません。

           大丈夫です。実を成らせない幼木ですから。

 

  この農薬のやり方は、農薬取締法でも認められた幼木にのみ適応されるやり方ですから、何ら問題ありま

  せん。植え付け後4年目以降の「結果樹園」では、エカキムシ防除は行いません。


  幼木園は花が着いても全部落としますが、中には見逃して、秋になって立派なかぼすが成っていることが

  あります。当然出荷も自家消費もせず、圃場で廃棄します。食べてはいけないのです。



炎天下でも頑張る エカキムシ防除

  梅雨が早く開け連日猛暑が続いていますが、若いスタッフは暑さをものともせず頑張っています。

  エカキムシ防除も6月中旬から開始し、うまく防いで、きれいな夏芽が発生しています。  



(きれいな夏芽)


 エカキムシの被害が見られず、

 きれいな夏芽


 先端3~4芽を摘芯(切る)し

 充実させ、次の芽を待つ





(防除風景)


 SSで手掛け散布

 苗と苗の間がまだ空いているの

 で、SSをふかすと薬液がムダに

 なるため手散布をしている。








「おもとの丘」は開園して5年目になりますが、最初の頃にエカキムシにしこたまやられたのです。

しかし、経験を積んできました。今年の夏芽は順調に伸びています。

農場長は「意地でもエカキムシを抑えてやる」と言って、猛暑の中、作業を行なっています。


苗は植えておけば勝手に成長  はしません。

きちんと管理をして初めて 「3年間待つのじゃぞ」になるのです。



                                ( おもとの丘の長老 )


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