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かぼすの肥料事情 (堆肥は万能か)

  • yoshiharutsuru
  • 6月2日
  • 読了時間: 4分

〔 おもとの丘奮闘記2025-④ 〕



前回、「再び、かぼすの花は気まぐれ」と題して、一部の園で花が非常に少ないことを書きました。これに関連することですが、今回は肥料に関して報告します。


かぼすは今さら言う間までもなく果樹(柑橘類)で、永年性作物です。よって、稲や野菜などの一年生作物とは肥料の

施し方が違います。

また、かぼすの着花生理が気象などに対して敏感であることや、幼木期(栄養成長期)から成木期(生殖成長期)にスムーズに移行させる必要があることなどから、「おもとの丘」では、肥料の施し方にずいぶん気を使っています。


 〔 結果樹園 〕 今年から本格的に結実(実を成らせる)させます。



結果樹園は、花を確認してから肥料を撒く

 一般的に一年生の作物は植え付け前、果樹類は芽吹き前に元肥(もとひ、もとごえ)として、年間施肥量の5割程度を最初に施します。その後は追肥(ついひ)として2~3回肥料をまきます。

 ところがかぼすは着花生理がデリケートで、花がたくさん着くだろうと思っていたらパラパラしかないということがあります。よって、芽吹き前の肥料は控えて、花の量を確認してそれに見合った肥料を散布しています。10a当り

○○kgとかの基準で肥料を撒いているのではなく、樹や園地に合わせて加減しているので、肥料代はずいぶん節約

できていると思います。


 かぼすは旬の時期の緑色が命です。秋以降には完熟の黄かぼすも出荷していますが、やはり、かぼすのイメージは

鮮やかな緑色です。出荷時期に緑色を濃くするために、実どまり後(生理落果終了後)に肥料成分が切れないよう管

理しています。




花を見る前、3月頃に大量に肥料を撒くと・・・




花の着かなかった樹では、馬力が余って

夏に徒長枝が出ます。


これでは来年も花が少なくなる恐れがあ

ります。






 ※結果樹園に堆肥を撒くと、肥料効果が長く続くのでコントロールが効かなくなり、生産が不安定になります。

  よって、実を成らせる園には堆肥は撒きません。(弱っている樹には撒きますが)



幼木園は肥料を効かせて、栄養生長を促す

 苗を植えてからの3年間は実を成らせず、ひたすら樹を大きくすることに専念します。肥料を切らさず、栄養生長

 を促進します。 




「エコロング」肥料


 植え付けの穴に施用。

 もともとは燐硝安加里という成分の高い化学肥料で 

 すが、特殊な樹脂でコーティングされて、長期にわ

 たって肥料が効くので、幼木には最適。
























「 尿 素 」


チッソを46%含む速効性肥料。

根からだけでなく、病害虫の防除の際に、薬液に500倍で混ぜて葉面散布(葉にかける)する。



















〔 堆 肥 〕



幼木に堆肥は有効です。

肥料的効果のほか、乾燥防止、抑草効果もあり。









主力の肥料




「 有機入り化成8号 」


油粕や骨粉などの有機物を含む化成肥料。


結果樹園では主力で、幼木園でも2年目以降は少量づつ

何回にも分けて施用しています。




















さて、「おもとの丘」の肥料事情を説明してきましたが、読者の中には「な~んだ有機栽培じゃないのか」と思われる方もおられるかもしれません。「おもとの丘」は有機栽培ではありません、必要に応じ化学肥料を使用しています。また、前述の理由のとおり、堆肥は幼木期には使いますが、結果樹園には使いません。堆肥だけを撒いて済むのなら楽ですが、そうはいきません。




堆肥は万能か?

 堆肥は消費者の方にもよく知られるようになりましたが、いろいろと種類があります。

     堆肥(たいひ)・・・カヤ、落ち葉、雑草等、植物のみを発酵腐熟させたもの。

     厩肥(きゅうひ)・・家畜糞尿を発酵させたもの。

 堆肥は植物体のみが原料ですから肥料成分はあまり高くありません。土に漉き込むと物理性の改善になります。

 厩肥は動物の種類によって成分が大きく異なり、牛糞はやや低めで、豚糞や鶏糞は高いので肥料として計算しておく

 必要があります。量が多いと害の出る可能性があります。



堆肥をやりすぎたら困る作物

 ・稲・・・草は繁るが収量は減る。

  ・スイカ、ウリ類・・・ツルは繁るが、花(実)が着かない。(ツルボケ)

  ・早生みかん・・・熟期遅延、皮の肥大、糖度低下

  ・ブドウ・・・・・大粒系ブドウ(巨峰等)の種あり栽培(花ぶるい)

          (ジベレリンによる無核栽培は問題なし)




            別に堆肥の悪口を書きたくて書いたのではありません。使える場面では使っています。

            農場経営をするうえで資材費の上昇は困りますが、世界情勢の影響で今後の見通しは

            不透明で、特にりん酸資源の枯渇が懸念されています。いずれ、化学肥料の比率を減ら

            さざるを得ない事態になるかもしれません。

            うちの園はまだ若い樹が多く、落ち着きが足りません。(うちの若い社員も同じ)もう

            少し年を食えば落ち着いて、毎年たくさん実を成らせてくれるでしょう。それまでは手

            がかかりますが、きめ細かな施肥管理が必要と思っています。


                                    ( おもとの丘の長老 )        


                      

   




 
 
 

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