かぼす栽培は敵ばかり
- yoshiharutsuru
- 6月23日
- 読了時間: 5分
〔 おもとの丘奮闘記2025-⑤ 〕
おもとの丘奮闘記はこの回をもって終了します。そこで、開園から今までのことを振り返ってみたいと思います。
なお、それぞれのトラブルやかぼす自体の解説は、個々の回でしつこく書いてきましたので、今回は総集編ということでサラッと書きます。
最初にとんでもない失敗
おもとの丘が、最初にかぼすの苗を植えたのは平成30年の3月でした。社員は全くの素人、植え付け作業は林業系の業者に委託して植えました。ところが、4月に入って植えた苗を見たところびっくり。半分以上の苗が枯れかかっていました。


(瀕死のかぼす苗) (懸命な救命作業:植え直し)
その後の救急・救命作業の結果、当初は半分枯れると思っていたのが、93%の苗が助かりました。この件の教訓としては、●事前に十分勉強 ●業者に丸投げはダメ ●苗は赤ん坊と一緒、丁寧に! でした。
栽培は敵だらけ ○○との闘い
〔 病害虫 〕
かぼすに限らずあらゆる農作物にとって、病害虫は深刻な敵といってもいいと思います。防除を一切せずに立派な
商品になるという作物は、露地栽培ではほぼないと言っていいと思います。(ビニールハウスで雨を防ぎ、防虫ネッ
トで虫を防ぎ、さらに黒ポリマルチで乾燥防止し、数十日で収穫できる葉菜類なら可能)



上左:かいよう病・・・かぼすの最凶病害
上右:エカキムシ(ミカンハモグリガ)
幼木の成長に悪影響
下 :アゲハ蝶の幼虫
幼木の成長に悪影響
※その他、黒点病、そうか病、ダニ類、カイガラムシ 等
〔 獣 害 〕
おもとの丘の周辺は深い森で、野生鳥獣がウジャウジャいます。その中でかぼすに実害があるのはイノシシ、
シカ、野ウサギです。
○イノシシ・・かぼすの葉や実は食べない。土を掘り返して苗を枯らす。
○シカ ・・かぼすの葉が大好物。葉を食べ、枝も折る。
○野ウサギ・・葉を食べ幹もかじる。幼木の大敵。


( 園地の周辺のシカ ) ( 葉を食べ、のしかかって枝を折る)


野
う
さ
ぎ
(樹が小さいと下の方の葉を食べるが、
届かなくなると幹をかじる)
※防獣柵は設置していますが、初期の頃の柵は簡易的でずいぶん破られました。その後は、造成事業とセットでし
っかりとした柵を作りましたので、ほぼ防いでいます。
〔 草 〕
「雑草のように・・・」という言葉がありますが、本当に草はしぶとくてたくましい。かぼすの苗が枯れかけていて
も、草はすくすくと育ちます。草は、肥料を横取りしたり日光を遮断したり、作物にとって本当に困った存在です。



上左:草刈り機による除草
上右:ハンマーモア(やや大きい樹)
下左:除草剤散布
※機械による除草と除草剤は一長一短があり、組み合わ
せて草管理をしています。もちろん、除草剤は使用基
準を順守して使用しています。
〔 気象災害 〕
強風、長雨、干ばつなど、気象災害には悩まされました。また近年の温暖化も、かぼすの着花生理を狂わせてい
るように感じます。


( 強風で倒された苗 ) ( 破れた防風ネット )
〔 隔年結果 〕
過去にもたびたび書いていますが、かぼすは着花の生理がデリケートで、ちょっとした気象等の変化で花が着
かなくなったりします。みかんなどでは、一年おきに豊作と不作を繰り返し隔年結果(かくねんけっか)と呼ば
れていますが、かぼすの場合は、2年続けて裏年ということもあります。これを技術でカバーして毎年ほぼ安定し
て実を成らせるのは難しく、苦慮しています。

(花が着かず、新芽ばかりが出た樹)
困ったもんだ
失敗ばかりではありません
ダメなことばかり書きましたが、そんなことばっかりではりません。
〔画期的な工法〕
国の事業を利用して、山を削り園地を造成しました。ところが、無数の石が出て、全面的に石を取り除き堆肥を
入れて農地とするためには、莫大な事業費がかかります。そこで・・・。
苗を植える列の部分のみに、別の場所で調合した良い土を入れました。工程は複雑になりますが、事業費は安く
抑えられ、かつ、苗の成長も良好です。



上左:深さ60cmの溝を掘る
上右:別の場所で調合した良い土を入れる
(表土+堆肥+腐熟木質チップ)
下 :地表から20cm盛る
(60+20=80cmの有効土層)

生育は良く、成園(収穫量が高止まり、いわゆる成人の園)になるのに、通常の植え方より3年以上早くなる。
※この工法は大分県下では例がないため、工事に際しての基礎数字もなく、設計や事業費積算に関係機関は苦労され
たようですが、苗の生育は良く、かつ事業費も抑えられたので本当に良かったと思います。
〔 年々増えるリピーター 〕
おもとの丘のかぼすは、青果は市場出荷はしていません。数社のネット通販と特定の会社や飲食店などで販売して
います。まだ出荷量は少ないので、選果場は数年先になることと思いますが、現在は、人の目で厳密に選果してい
ます。規格として「標準品」と家庭用の「お徳用」がありますが、他と比べても確実に品質は勝ると自負していま
す。

昨年買ったらよかったので・・・、とか、毎年
ご注文を頂く方とか、リピーターのお客様が増
えています。
今後ますます、お客様の輪が広がっていけばよ
いと思います。
「おもとの丘」はまだ発展途上です。栽培面や販売面で七転八倒しながら紆余曲折を繰り返し、
それでも艱難辛苦を乗り越えて日々進化しています。
今はほぼ無名の農場ですが、数年後には「あの おもとの丘・・・」といわれるようになるや
もしれません。
「おもとの丘の長老」は、いささかくたびれたので引退します。あとは若いモンに任せます。
ということで、この奮闘記もこれで、完結とさせていただきます。ありがとうございました。
〔 おもとの丘の長老 〕
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