( おもとの丘奮闘記 ㉟ )
おもとの丘では、かぼすやゆずの収穫はほぼ終わり、出荷も一部を除きほとんどの通販サイトは終了しました。
おかげさまで出荷量は昨年を大きく上回り、スタッフ一同喜んでいます。
ただし、栽培面での失敗や思わぬアクシデント、気象の影響など、「あれをこうしておけば」とか、「台風が来な
ければ」など「~たら、~れば」の話がついつい出てしまいます。そんなことを今さら言ってもしょうがありませ
ん。来年は同じ失敗をしないよう、十分に気を付けたいと思っています。
約2か月まとまった雨が降っていない
(やや弱っている樹 : 葉が黄化し落葉)
気象データを調べてみると、9月の27日に50~60mmの雨が降ったのを最後に、約2か月間まとまった雨が
降っていないのです。
「かぼすやゆずは果樹だから、そんなに雨が降らなくても問題ないのでは?」と思われるかもしれません。たしか
に、樹が大きくなって根が十分に張り、かつ土壌が深い場合、乾燥の害はほとんど出ません。一年生の作物である
野菜や稲に比べ、乾燥に強い作物と言えます。
パラパラの雨ではあまり意味がない
「時々雨は降っていたよ」という感想を持っている人もいるかもしれません。その後の雨の記録を追ってみると、
10月7日に10mm弱、10月17日に約20mm、11月13日に約5mmの降雨がありました。
しかし、この程度の雨では土の表面だけ濡れて、深くまで届かないのです。
この雨の日以外は天気が良く、気温も高めに推移しました。土が乾燥しています。
(葉に雫が) (しかし3cm下はカラカラ)
今日は雨
この原稿を書いている今日(11月23日)雨が降っています。「よし、よし、これで一息つけるか」と思
っのですが、調べてみると10mm程度。土を掘ってみると、濡れているのは表面の2~3㎝程度でその下は
カチンカチンのままでした。全然足りない!
幼木の乾燥の影響
植えてから3年目までの樹を「幼木(ようぼく)」と呼んでいますが、この幼木の一部に乾燥の影響が出ていま
す。幼木は地上部も地下部(根)も成長している途中で、根は十分に深くまで伸びておらず、乾燥には弱いので
す。しかも悪いことに、9月の台風で樹が強く揺さぶられてしまい、細かい根(細根:水や肥料を吸収する根)
がかなり切られてしまっているのではと推測されます。一部で葉が黄化した苗が見られます。
( 乾燥の影響が出た幼木園 )
4番圃場:植え付け後2年目
葉が黄化:おそらく落葉する
(しかし、この程度では枯れない)
結果樹の乾燥の影響
果実を成らせるようになった樹を「結果樹(けっかじゅ)」と呼び、おもとの丘では4年目と5年目の樹がこれに
該当します。年々樹が大きくなり収穫量も増えていくのですが、8~10年頃になると収穫量がピークに達し、そ
れ以降横ばいになります。これを「成園期(せいえんき)」と呼びますが、おもとの丘では、まだ成園期の園地は
ありません。
4~5年生とはいえ結果樹は、根の張りが幼木より深く乾燥にも比較的強いのですが、土の浅い園地や大量に遅く
まで果実を成らせた樹では影響が出ます。
( 遅くまで成らせたかぼすの枝 )
果実の周辺の葉が黄化している
もう少し早めに収穫すべきでした。
黄かぼすにはこのリスクがあります。
水をやればよいのでは?
乾燥しているのなら水をかければよいのでは?と思われる人がいるかもしれません。しかし、露地の果樹栽培で は水やりは非常に困難です。乾燥で瀕死の状態になった1~2本の樹を助けるのは簡単です。しかし、園地全体
で何百本もの樹に水やり(潅水)することはできません。
なぜなら、まず水の必要量が多いこと。5年生くらいの樹でも1本当たり50~100ℓの水が必要になります。ま
た根が深いため、表面にかけただけではダメで、穴を掘るか特殊な金具で地下に水を送り込むことが必要になりま
す。よって、自然の雨は大変ありがたいのです。雨も一気に降るのではなく、中くらいの雨が長く降るとスムーズ
に土に浸透します。
〔 余 談 〕
柑橘類の葉は寿命が1年半から2年程度とされ、健全な樹でも秋口から冬にかけて一部の葉が黄化、落葉しま
す。そして4月になると新芽(春芽)が出て、葉の世代交代が行われるのです。
しかし、今回の乾燥のように多くの葉が黄化・落葉すると、葉に蓄えられていた光合成による同化養分が不足し
て来年の芽吹きや枝の伸長、花着きに影響します。その点を心配しています。
秋も深まり、落葉樹は葉を落としつつあります。
落ちるべき葉がひらひら落ちるのは風情があります。
落ちてはいけない葉が落ちるのは寂しくなります。
自然相手の仕事とはいえ、つらいなあ。
来年はかぼすの樹が健やかでありますように。
( おもとの丘の長老 )
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